不倫の示談とは、不倫の被害者(一方配偶者が不倫をした場合の他方配偶者)と加害者(既婚者と不倫行為を行った者)で協議を行い、不倫行為に関して話し合いでの解決を図ることを言います。
(※「不倫」という言葉は一般的によく用いられますが、法律用語としては、「不貞」という言葉を使います。が、ここではあえてわかりやすいように「不倫」という言葉を使います。)
当事者間で金銭面などについて合意することができれば、その不倫に関する民事的な紛争は解決したことになります。
示談では、慰謝料の金額や支払方法などについて協議して、示談書の内容に「今後不倫当事者は相互に接触しない」旨の条項などを盛り込むことも可能です。
「配偶者の不倫について、不倫相手と示談をしたい…でも示談ってどんなことをすればいいの?また、素人でも示談を成立させることはできるのだろうか?」とお悩みのあなたに向けて、示談の概要や効果・メリット、示談の流れとポイント、示談書の作成方法、示談をする際の注意点などをご紹介します。
ただし、当事者本人が個人で直接示談交渉をすることで、事態が悪化するケースもあります。不安があれば弁護士に相談してくださいね。
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不倫の示談とは
不倫の示談とは、被害者と加害者との間で、不倫行為に関する問題を話し合いで解決するために行うものです。主に、
- 不倫行為に対する慰謝料の金額・支払方法・支払期限
- 慰謝料以外の示談条件(謝罪・接近禁止など)
- 示談内容に違反した場合のペナルティ
などを話し合い、決定します。
示談書は、合意書や和解書と呼ばれることもありますが、呼び方が異なるだけで、内容として特に違いはありません。法的なポイントをしっかりと押さえた内容を盛り込めば、法的効力のあるものとなります。
ここでは、不倫で示談をする目的や不倫の示談をするメリット、示談のタイミングと流れ、示談すべきケースなどを解説します。
不倫で示談をする目的
不倫のトラブルで示談をする目的は、トラブルの早期解決をする点にあります。
お互いに話し合い、慰謝料の金額や支払方法などについて合意することができれば、被害者と加害者との間で、民事的な解決は済んだものということができます。
慰謝料の請求や示談条件の合意にしても、裁判以外の方法で解決させるとなれば、示談が必要となります。
不倫で示談をするメリット
不倫で示談をするメリットは次の通りです。
不倫のトラブルで示談をするメリット |
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被害者側 |
相手に慰謝料を請求し、責任を取らせることができる。 慰謝料を支払ってもらうことで精神的な苦痛を幾分か緩和することができる。 |
加害者側 |
不倫のトラブルを清算することができる。 何度も慰謝料を請求されるなどのトラブルを回避できる。 |
人によっては、訴訟など大事にしたくないという方もいるでしょうから、訴訟になる前にスムーズな解決が期待できるのも示談のメリットと言えるでしょう。
不倫のトラブルで示談をする流れとタイミング
不倫相手と示談をする際の流れやタイミングは次の通りです。
示談をする前には、必ず不倫行為の証拠を押さえておかなければなりません。
証拠がないまま交渉を始めても、相手が応じない可能性があります。また、相手は、不倫がバレていることに気付き、不倫の証拠となりそうなメールやLINEのやり取りを全て削除したり、今後は分からないように不倫を継続するおそれがあります。
つまり、示談をするタイミングとしては、不倫行為の証拠を押さえた後になります。
また、示談と聞くと、被害者・加害者が顔を合せて交渉するイメージがあるかもしれませんが、まずは、内容証明を送付するのが一般的です。
この一連の示談の流れも、ご自身で行う方法と弁護士に一任する方法があります。ご自身で行うのと、弁護士に一任する方法についての違いは「不倫トラブルの示談は弁護士に依頼するのがおすすめ」をご覧ください。
不倫で示談をすべきケース
不倫で示談をすべきケースは次の通りです。
- 不倫相手に謝罪と慰謝料の支払いをしてもらい、責任を負ってほしい
- 配偶者と不倫相手に不倫関係を断ち切ってほしい
- 訴訟など大事にせずに不倫のトラブルを早く解決したい
- 相場以上の慰謝料を支払ってもらいたい
不倫のトラブルで被害を受けた側は、謝罪や慰謝料の支払いといった形で加害者に責任を果たしてもらうことで、多少は気持ちが晴れるかもしれません。
また、示談書を交わす際に「今後(不倫当事者同士は)接触をしない」旨を明記して、違反した場合に違約金を課すなど、自由な取り決めも可能です。
訴訟となると、時間も手間もかかります。後述しますが、訴訟の場合、慰謝料の相場はおおよそ50~300万円程度となりますので、相場以上の慰謝料がほしい場合には、訴訟に進む前に一度交渉をしてみるということも考えられます。
一方で、不倫行為によって家庭を壊された被害者からすれば、慰謝料の支払いで全てが済んでしまうというのは生ぬるいと感じるでしょう。
しかし、不倫行為は、民法上の不法行為であっても、刑事罰の対象ではないので、犯罪行為として捜査機関に取り扱ってもらうことはできません。合法的な対応として慰謝料を請求することが限界なのです。
【関連記事】不倫慰謝料相場は50~300万|相場以上に請求するための証拠とは
不倫で示談をする方法
ここでは、不倫のトラブルに関して自分で示談をする方法を解説します。
不倫で示談をする前に、まずは不倫行為の証拠を集める
不倫トラブルの示談では、相手に不倫行為を認めさせるためにも、まずは不倫行為の証拠を押さえてから交渉をすることが肝要です。
法律上認められる不倫行為の証拠は、一方配偶者が、他方配偶者以外の異性と性交渉またはそれに類する行為に及んだという事実を客観的に立証できるものでなければなりません。
具体的に言えば、配偶者と不倫相手が性交渉をしている写真や動画、ラブホテルに出入りする写真や動画、肉体関係を結んでいることがわかるメールのやり取りなどが考えられます。
こういった証拠を個人で押さえることは簡単ではありませんので、もし必要ならば浮気調査のプロである探偵に相談をしてみましょう。
もちろん、あなたに交渉力があり、手持ちの証拠だけで相手が不倫の事実を認めるのであれば事足りるかもしれません。しかし、示談はあくまで交渉であり、相手が認めない限りは示談書に署名を強要させることはできません。
つまり、相手が認めなければ交渉のしようがなく、慰謝料の請求も司法の場に出なければなりません。裁判となれば、事実を認定するのは裁判所です。
訴訟となった場合には、不倫行為の立証が求められます。そういった先を読んで、事前に確実な証拠を用意しておくことも大切なのです。
【関連記事】不貞行為の証拠になるものは?自白・Line・写真は証拠になるのか
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内容証明を送付する
不倫の示談交渉では、最初に内容証明を送付するのが一般的です。
内容証明とは、いつ、誰が、誰に、どんな内容の郵便を送ったのか証明できる特殊な郵便のことです。内容証明を受け取っておいて、そんな郵便は受け取っていないといった言い訳が通用しなくなります。
内容証明には、不倫行為の事実、支払ってほしい慰謝料の金額や期限などを明記して送付したり、交渉に応じるように呼び掛ける内容を盛り込んだりします。
内容証明のメリット・デメリット
メリットは、相手にプレッシャーを与え、慰謝料を支払うように促す効果がある点です。しかし、内容証明に法的な強制力はないため、相手が無視をすればそれまでです。
つまり、内容証明を送付して、相手が内容証明に記載されている内容とおりの支払いに応じてくれれば、直接交渉をする必要はありませんが、相手が支払いに応じてくれない場合は、直接交渉をしなければなりません。
また弁護士によっては、ジャブのように内容証明を送付して、様子を見るなどの方法で交渉するケースもあります。
【関連記事】不倫相手に内容証明を送る|不倫解消・慰謝料請求するための全知識
不倫相手と直接交渉をする
相手が、内容証明に記載されている内容とおりの支払いに応じない場合は、不倫相手と直接交渉をすることになります。もし不倫相手と直接交渉をするのであれば、プライバシーの問題などに配慮し、交渉をする場所選びには十分気を付けましょう。
直接交渉のメリット・デメリット
不倫相手と直接交渉をするメリットは、最も実行しやすい手軽な方法で、費用も掛からず、その場での解決が期待できる点です。
一方で次のようなデメリットがあります。
- 相手と顔を合せて冷静に話し合わなければならないなど精神的な負荷が大きい
- 相手が応じてくれるかはわからない
- 交渉の仕方によっては、慰謝料の支払いや示談条件に合意してもらえない
- 感情的になり示談が成立しない場合がある
直接の交渉はトラブルに発展する確率が高いです。可能であれば、第三者に同席してもらうか、交渉に長けている弁護士に代わりに出席してもらったほうが賢明です。
不倫相手と示談する具体的な手順
不倫相手と会うことができたら、慰謝料の請求書など、主張をまとめた書面を相手に渡して内容を確認してもらいます。
もちろん示談書でも構いませんが、金額などは交渉内容次第で変更になる可能性があるため、記入しないでおきましょう。
慰謝料の請求書・例
慰謝料請求書 私、〇〇〇〇は、夫である〇〇〇〇の不倫行為を疑い、興信所に調査を依頼したところ、2019年○月○日頃から〇〇〇〇と交際し、不倫行為に及んでいることが判明しました。 あなたの行動は、民法709条の不法行為に該当します。そこで、夫である〇〇〇〇との交際中止を要求します。さらに、慰謝料として300万円を請求します。 振込先○銀行○支店普通口座○名義口座番号〇〇〇〇 2019年11月30日までにお振込みください。 尚、慰謝料のお支払いに同意いただけない場合は、法的措置を講じます。あらかじめ、ご了承ください。
2019年○月○日 東京都新宿区西新宿○ー○ー○ 〇〇〇〇
東京都新宿区高田馬場○ー○ 〇〇〇〇 |
これ以外にも、不倫相手が慰謝料・示談条件に応じないのであれば、交渉をしていくことになります。
慰謝料を請求するテクニックとして、少し高めの金額を設定しておき、自分が本当に支払ってほしい金額にまで減額に応じるなどして、解決していきましょう。
交渉がまとまった後は、示談書に署名・押印をしてもらいましょう。後述する、示談で慰謝料を請求する際のポイントも参考にしてみてください。
不倫の示談成立のポイントは落としどころを決めておくこと
不倫の示談を成立させるポイントは、落としどころを決めておいて、無理な要求をしないということです。
お伝えしたように、高額な慰謝料を設定して1円も減額したくないという方もいるかもしれません。また、不倫相手を許せない気持ちから、無理難題を課したいと感じるかもしれません。
しかし相手の人権を侵害するような、無理な要求を盛り込んでも、公序良俗に反して無効となる可能性があります。
また、それではいつまでも解決には至らず、あなたが今本腰を入れて取り組むべき、離婚や夫婦関係の修復などが疎かになってしまうかもしれません。
示談の本来の目的は、不倫のトラブルを解決という形に持って行き、自分の生活を再開させることです。納得のいかない部分もあるかもしれませんが、交渉前にしっかりとシミュレーションをして、冷静に対応しましょう。
不倫の示談書の概要
ここでは、不倫の示談で重要となる、示談書のテンプレートや盛り込む内容、示談書の作成方法、慰謝料の相場などをご紹介します。
不倫の示談書のテンプレートと形式
まずは不倫の示談書の内容をご覧ください。
示談書 ナビ花子(以下「甲」)とナビ美 (以下「乙」)は、乙が甲の夫ナビ男(以下「丙」)と行った不倫行為に関し、以下のように合意した。 1.乙は、甲に対して、令和元年1月〇日から令和元年10月〇日の期間に、乙が甲の夫丙と交際して不倫行為を行ったことを認め、謝罪する。 2.乙は、甲に対して、慰謝料として金●●●万円を令和元年11月30日までに、甲が指定する口座(●●銀行●●支店 普通 口座番号 口座名義)に一括で振り込む方法により支払う。振り込みにかかる手数料は乙の負担とする。 3.乙の甲に対する前項の支払いが遅れた場合は、期限の利益を失い、乙は甲に対して、前項の金額から既払い金を控除した金額及び期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みに至るまで年5%の割合による遅延損害金を付加し、これを直ちに支払うものとする。 4.本合意成立後、乙について次のうち一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくとも期限の利益を失い、乙は直ちに債務の全額を支払うものとする。 ア.支払いの停止又は破産、民事再生開始のいずれかの申立てがあったとき。 イ.住所変更または勤務先の変更の通知を怠るなど、甲に乙の居住地または勤務先が不明になったとき。 ウ.その他本合意書の各条項に違反したとき。 5.乙は丙と、合理的な理由がある場合を除き、今後一切の接触を禁じる。 6.甲及び乙は次に規定する行為を行ってはならない (1)知り得た当事者に関する情報を、第三者に対してみだりに口外してはならない (2)相手方の居住地・勤務先を訪問すること (3)相手方及び相手方の親族、友人と接触すること (3)相手方に義務なき行為を行わせること (4)相手方の名誉を害する事実を周囲に告知すること (5)その他一切の迷惑行為 7.乙は、甲に対して慰謝料を支払うことによって発生する、丙に対する求償権を放棄する。 8.甲及び乙は、本示談書に定めるほか何らの債権債務が存在しないことを相互に確認し、仮に相手方に何らかの権利を有する場合はその一切を放棄する。 本示談書の成立を証するため、本示談書を2通作成し、各自1通を所持する。 以上 令和 年 月 日 (甲)住所 氏名 印 (乙)住所 氏名 印 |
これはあくまでもテンプレートですので、交渉でお互いに納得のいく条件を盛り込みましょう。示談条件に合意したら、双方で署名・押印をします。
示談書の形式に特段の決まりはありませんが、裁判に発展した場合も考慮すると、公的機関で採用されているA4サイズで作成したほうがよいでしょう。
また、示談書は保管することになりますので、保管に耐えられるような通常のコピー用紙で印刷しましょう。
示談書の枚数に関しても決まりはなく、もし複数枚にわたってしまった場合は、ページとページのつなぎ目に契印をして、1部ごとにホチキスでまとめておきます。
示談書には難しい言葉がたくさんそろっていましたよね。盛り込む内容の詳細について次項で解説します。
不倫の示談書に盛り込む項目
不倫の示談書には次の項目を盛り込むのが一般的です。
- 不倫行為に関する事実と謝罪
- 請求する慰謝料・支払方法・支払期限
- 清算条項:示談書に明記された内容の他に、双方に債権債務が存在しないこと
- 支払いが遅れた場合の対応
- 示談の条件:接触禁止・守秘義務・迷惑行為の禁止 など
清算条項を盛り込むことで、この示談書に明記された慰謝料以外に、金銭的な取り決めはないことを示します。示談が成立した後で、追加で慰謝料の請求ができないということです。少なくとも、上記の内容は盛り込みましょう。
支払いが遅れた場合の規定
上記の示談書の3つ目の項目には、支払いが遅れた場合について規定しています。
3.乙の甲に対する前項の支払いが遅れた場合は、期限の利益を失い、乙は甲に対して、前項の金額から既払い金を控除した金額及び期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みに至るまで年5%の割合による遅延損害金を付加し、これを直ちに支払うものとする。 4.本合意成立後、乙について次のうち一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくとも期限の利益を失い、乙は直ちに債務の全額を支払うものとする。 ア.支払いの停止又は破産、民事再生開始のいずれかの申立てがあったとき。 イ.住所変更または勤務先の変更の通知を怠るなど、甲に乙の在住または勤務先が不明になったとき。 ウ.その他本合意書の各条項に違反したとき。 |
慰謝料の支払いが遅れた場合は、遅延損害金を年5%加算され、ただちに支払うことを定めるのが一般的です。
また、不倫相手が慰謝料を支払わなかった場合や、破産申告・民事再生などを行った場合、居住地や勤務先の変更を通知しなかったことなどにより所在が不明になった場合、その他示談書に定めた条項に違反した場合に、一括で支払うことを定めることもできます。
示談の条件
示談の条件について定めた部分は次の通りです。
5.乙は丙と、合理的な理由がある場合を除き、今後一切の接触を禁じる。 6.甲及び乙は次に規定する行為を行ってはならない (1)知り得た当事者に関する情報を、第三者に対してみだりに口外してはならない (2)相手方の居住地・勤務先を訪問すること (3)相手方及び相手方の親族、友人と接触すること (3)相手方に義務なき行為を行わせること (4)相手方の名誉を害する事実を周囲に告知すること (5)その他一切の迷惑行為 |
どんな内容を盛り込むかは当事者で交渉して自由に決定できますので、これらの内容を盛り込むことが必須ではありません。
上記の内容ですと、接触は禁止、不倫の事実は第三者に口外しない、義務のない行為を負わせない、危害を加えるといった迷惑行為の禁止などが盛り込まれています。
求償権の放棄
求償権(きゅうしょうけん)について解説します。不倫行為をした責任は、不倫行為をした配偶者と不倫相手にあり、その損害を賠償する義務も2人にあります。
しかし、慰謝料の請求は配偶者だけや、不倫相手にだけ請求することも可能です。その場合、慰謝料を支払った側は、慰謝料を支払っていない側に対して、支払金額の一部を請求することができます。
これが求償権と呼ばれるものです。あなたが配偶者と離婚をする場合、不倫相手から求償をされるのは不倫をした配偶者だけですので、直接関係はありません。もっとも、あなたが離婚しない場合は、家計からお金が出て行くことになります。
この求償権の放棄を明記し、不倫相手が合意すれば、不倫相手は後から求償請求を行うことができません。
不倫の示談の慰謝料の相場
気になるのが、示談書に盛り込む慰謝料の金額ですよね。
「不倫で示談をすべきケース」でお伝えしたように、不倫行為の慰謝料の相場は50~300万円と言われていますが、これはあくまでも訴訟で請求した場合です。
示談では、双方が納得して合意に至るのであれば、金額にも決まりはありません。極端な例ですが、0円でも、1,000万円でも可能です。
もっとも相手が支払えないほどの慰謝料を請求しても、トラブルの収拾がつかなくなりますので、交渉をして現実的な金額で折り合いをつけましょう。
不倫の示談書の作成部数
示談書は示談の当事者分作成します。2者間の示談であれば、加害者・被害者の2者分を1部ずつ作成することとなります。
なお、示談書は加害者・被害者どちらが作成しても問題はありません。しかし、被害者が作成した方が、条件を提示しやすいでしょう。
無効となる示談書の内容
示談書はテンプレートでご紹介したような内容であれば問題ありません。
しかし、行き過ぎた人権・名誉を侵害するようなペナルティや違法性のあるペナルティなど過度な要求をしても、権利濫用や公序良俗に反して無効となる可能性があります。
例えば、「職場不倫」の場合は、相手に無理やり仕事を辞めさせるといったことはできません。本人が会社と交渉をして部署異動などを願い出るといった対応は考えられますが、強要をできないことは覚えておきましょう。
その点は「不倫の示談成立のポイントは落としどころを決めておく」でお伝えした通りです。
不倫の示談をする際の注意点
ここでは、不倫の示談をする際の注意点、ポイントを解説します。
不倫慰謝料を請求できる権利の時効は3年
注意すべきは不倫の慰謝料を請求できる権利の時効は3年である点です。3年の起算点は、あなたが不倫の事実、もしくは、不倫相手が判明した日から数えて3年です。この3年が経過する前に、可能な限り早く慰謝料を請求しましょう。
【関連記事】不貞行為の時効は本当に3年?時効までギリギリ・過ぎた時にできること
不倫の示談書は公正証書にする
不倫のトラブルで作成した示談書は、公正役場に持って行き、公正証書にしてもらいましょう。
公正証書とは、公証人が作成する公文書のことで、示談書を公正証書にすることで、証明力や執行力・信頼性が高まるメリットがあります。
公証人は元裁判官など法律に精通した人が就いており、作成した示談書を法的に有益なものとしてまとめてくれるため、裁判となっても信頼性が高い証拠となります。
また、公正証書に具体的な慰謝料の支払方法を記載しておくことで、慰謝料の支払いが滞った場合、裁判手続を経なくとも、差押えといった強制執行手続をとることもできます。
公正証書の作成費用は、次の通りです。
引用元:日本公証人連合会|手数料
公正証書の作成にあたって、少なくとも1回は、公正役場にいく必要があります。公正証書を作成する際は、事前に公証役場に電話をして、必要書類や持ち物などを確認しておきましょう。
加害者・被害者の顔写真付きの身分証は必要となります。
公正証書を作成する際には、当事者双方が署名・押印をします。シャチハタは不可なのでご注意ください。
なお、公正証書を作成するにあたっては、事前に公証役場に予約の連絡を入れる必要がありますが、公証役場の混み具合によっては、なかなか公正証書作成日の予約が取れないこともあります。
いわゆる「ダブル不倫」の場合、後から請求される可能性がある
ややこしい話ですが、いわゆる「ダブル不倫」でお互いの家庭が離婚しない場合は、不倫行為をした人の配偶者が被害者となり、お互いの不倫相手に慰謝料を請求し合うと、事実上相殺されてしまうデメリットがあります。
この慰謝料の事実上の相殺を避けるためには、離婚をするか、相手の配偶者に発覚しないように、不倫のトラブルを処理しなければなりません。
しかし、家計から慰謝料を捻出するとなると、やはり配偶者に発覚してしまう可能性がありますし、示談後に相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性もあります。
こういった事態を避けるには、事前に当事者間で示談をするなどの方法もあります。しっかりと慰謝料を支払ってほしいとお考えなら、一度弁護士に対処法を相談しておくことをおすすめします。
相手が不倫の示談に応じない場合の対応
不倫相手と示談交渉を始めたものの、不倫相手が一切応じないといったことも考えられます。もし不倫相手が示談交渉に応じない場合は、どう対応すべきなのかご紹介します。
訴訟をする旨を伝えてその場は引く
もし不倫相手が、不倫の事実は認めているものの、慰謝料の金額で折り合いがつかないのであれば、粘り強く交渉していったほうがよいでしょう。
訴訟は時間も費用もかかるため、相手はもちろん、あなたとしても避けたいですよね。
しかし、不倫相手が頑なに示談に応じないのであれば、毅然とした態度で「こちらは訴訟を起こす考えである」ことだけを伝えてその場は引きましょう。
訴訟を起こす考えを伝えることで、相手もこれ以上大事にしたくないのであれば、交渉に応じる可能性があります。
いずれにしても、相手が応じない限り、訴訟を起こすか、代理人を立てて交渉しなければ、解決は難しいのが現実です。
脅迫行為はしない
交渉に応じない相手に対して無理に交渉を続けても、どこかでトラブルに発展するおそれがありますので、潔く引いて次の対策を講じた方が賢明です。
相手が交渉に応じないからといって、脅迫行為ともとれるような「示談に応じないなら周囲に公表する」といった発言は、脅迫罪に問われる可能性がありますので、やめましょう。
不倫トラブルの示談は弁護士に依頼するのがおすすめ
お伝えしたように、当事者本人が個人で交渉するとなると、問題が解決しない可能性があります。ここでは、不倫の示談を弁護士に依頼した場合のメリット・料金などについて解説します。
不倫の示談を弁護士に依頼するメリット
不倫の示談を弁護士に依頼するメリットは、次の通りです。
- 弁護士が内容証明から示談書作成・示談交渉まで代理人として全て行ってくれる
- 弁護士が代理人として出てくることで相手も交渉に応じる可能性がある
- 精神的な苦痛や負担が軽減できる
- 場合によっては早期の解決が期待できる
不倫の示談交渉では、やはり当事者が感情的になりやすいため、当事者本人が個人で交渉をしても、話し合いがまとまらずにうやむやになるケースもあります。
弁護士に依頼をすることで、あなたの代理人として相手と交渉をしてもらえます。
法的なポイントを押さえて、相手と上手く交渉してもらえ、訴訟にならずに早期の解決が期待できるでしょう。
相手からしても、弁護士との交渉となると、訴訟が現実味を帯びてきますし、交渉に応じやすくなるかもしれません。精神的な苦痛や負担が軽減できるのも大きなメリットです。
不倫の示談を弁護士に依頼した場合の費用の相場
不倫の示談を弁護士に依頼した場合の費用の相場は、次の通りです。
不倫の示談を弁護士に依頼した場合の費用の相場 |
|
着手金 |
20~30万円 |
報酬金 |
獲得金額の10~20% |
ただし、弁護士費用は各弁護士事務所の料金体系によって左右されるため、あくまでも目安とお考えください。
例えば、相手に300万円の慰謝料を請求すれば、着手金が20~30万円、報酬金額が30~60万円、あわせて50~90万円、それ以外に実費や日当などもかかります。
もっとも、訴訟になった場合を考えると、これよりも高額になる可能性もありますので、早い段階で弁護士に依頼をして訴訟を避けるのも一つの方法です。
【関連記事】離婚問題解決を弁護士に依頼した際の費用と安く抑える方法
まとめ
この記事では、不倫相手との示談を上手く成立させたい人に向けて、不倫の示談の概要から、示談を成立させるポイントと手順、示談書のテンプレート・注意点などをご紹介しました。
不倫の示談は、当事者本人が個人で対応することも不可能ではありません。しかし、相手によってはスムーズに進まずに、さらなるトラブルに発展するケースもあります。
示談交渉が長引けば、それだけ精神的な苦痛や負担も大きなものになります。また、示談交渉をする際には、不倫行為の証拠が必須です。
自分で示談交渉を行うのが不安だと感じた方は、証拠に関しては探偵に依頼して集めてもらい、示談交渉については弁護士に依頼することをおすすめします。
しっかりと対策を講じておくことで、不安を少なく、後悔しない示談ができるでしょう。この記事があなたのお役に立てれば幸いです。
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