慰謝料の請求方法には大きく分けると3パターンあります。それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
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話し合い |
・早期解決の可能性が高まる ・夫(妻)や不倫相手が言い訳したり、言い逃れしたりするのを防げる |
・ご自身の交渉が不適切だった場合、適切な金額の慰謝料を請求できない可能性がある ・記録を残しておかないと「言った/言わない」の争いに発展しやすい |
書面 |
・時間をかけて主張を考えられるので、満足のいく請求ができる ・文字で請求するので、ご自身の主張が正確に相手に伝わりやすい |
・書面でやり取りをするため、解決するまで時間がかかる可能性がある ・夫(妻)や不倫相手に言い訳を考える時間を与えてしまう |
裁判 |
・相手が慰謝料の支払いを拒否しても強制的に支払わせることができる |
・不倫されたことが公開されてしまう ・緊張状態が長く続く |
この記事では請求方法の詳細をお伝えします。
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話し合いで慰謝料請求する場合
慰謝料請求をするための有効な方法の1つとして『直接顔を合わせての話し合い』があげられます。早期解決したい場合や、言い逃れなどを防ぎたい場合に有効な方法です。
話し合いで慰謝料請求する場合、以下の4ステップによって法的に有効な約束を交わすことができます。
STEP1:話し合いの機会を設ける
まずは話し合いの機会を設けます。場所は近くのファミレスや喫茶店がおすすめです。たとえ話し相手が夫(妻)だったとしても、自宅での話し合いは避けるようにしましょう。逆上した相手が襲ってきたり、あなた自身も取り乱してしまう可能性があるからです。
夫(妻)でしたら連絡先を知っているので、話し合いの機会を設置するのは比較的簡単でしょう。ただし、話し合いなどでは専門家が立ち会うなどの機会はまずなく、不利に働きえることを平気で言ってしまう、録音をとられてしまうことが大半です。
一方、不倫相手の連絡先は知らない方が多いと思います。その場合は、以下の方法で連絡先を入手してください。
- 一般的:夫(妻)から聞く
- 例外的:探偵を雇う
一般的には夫(妻)から不倫相手の連絡先を聞いて連絡します。しかし、人によっては不倫相手の連絡先を教えない人もあります。その場合には探偵を雇い、連絡先を入手するようにしてください。
多少コストはかかりますが、請求した慰謝料の中から支払えば、金銭的にはトータルでプラスになるケースが多いでしょう。
連絡先を入手したら、以下の事項などを詳細に伝えて、確実に話し合いに来てもらえるようにしましょう。ただし、どうしても見つからない場合は携帯番号だけでも知っておくと、専門家に依頼した場合には調査が可能でしょう。
- いつ会うか
- どこで会うか
- 持ち物はいるのか
- 来なかった場合にはどうするか(裁判に持ち込むなど)
STEP2:話し合いのための準備をする
話し合いをするために準備をします。以下のものを用意しましょう。
- ボイスレコーダー
- 紙とペン
- 請求内容をまとめた資料
ボイスレコーダー
ボイスレコーダーは2つの理由で必要になります。1つ目は『発言に責任を持たせるため』です。慰謝料について話し合いの場で決まったとしても、後日、「そんなことは言っていない」と発言を覆す可能性があります。こうしたことを防ぐためにボイスレコーダーは必要です。
2つ目の理由は『ご自身が脅迫しなかったことを証明するため』です。後日、相手が「あのときはそういうしかなかったんです。脅されていたんです」と言ってくるかもしれません。
脅迫があると、契約が無効になる可能性があるからです。。脅迫は存在せず、お互いの合意をもって決定したことを証明するために、一部始終を録音しておく必要があります。
なお、念のため、録音すると断っておくとなおよいでしょう。念のためご紹介しておくと、東京高等裁判所は、証拠排除されるための要件として2つの要件を設定しています。①人格権侵害②反社会的手段によること。これらが満たされないないならば問題はありません。
紙とペン
お互いの意思疎通が取れていることを確認するために紙とペンを用意しましょう。言葉だけのやり取りでは、お互いに認識のずれが生じてしまう可能性があります。そこで紙とペンで決定事項をまとめることによって、認識のずれをなくす工夫ができます。
後から「そんなつもりじゃなかった!」なんて言われたら面倒ですからね…。
請求内容をまとめた資料
あらかじめ請求内容をまとめて資料におきましょう。まとめておく事項としては以下の2点は絶対にまとめておくようにしてください。
- 請求金額
- その金額になった根拠(判例など)
高額な金額を口頭で請求することに気が引ける人や相手に同情して金額を差し引いてしまう人がいます。しかし、その場の感情で慰謝料を減額してしまうと後悔する可能性があります。自分の精神的ダメージをしっかりと提示するためにも、金額をあらかじめ資料に記載しておきましょう。
STEP3:話し合いをする
いよいよ話し合いをします。できればホテルのラウンジ、コーヒーショップなどのオープンスペースで行うほうが、周囲に人が多く、のちのちに争いにならずに済むとは思いますが、そのときの注意点は以下の点です。
- 車で迎えに行かないようにする
- ボイスレコーダーを回すのを忘れないようにする
- 最後に紙面でまとめて合意をとる
車で迎えに行かないようにする
車で迎えに行かないようにしましょう。車で迎えに行くと「無理やり連れていかれた」「車の中で怖い思いをさせられた」など不利な証言をされる可能性があります。相手自身の意思で合意を取る必要があるので、そういったリスクを減らすためにも車で迎えに行かず、現地で集合するようにしましょう。
ボイスレコーダーを回すのを忘れないようにする
ボイスレコーダーを回し忘れないようにしましょう。相手に発言に責任を持たせるためにも、ボイスレコーダーを回す旨を伝えてから、回し始めることが望ましいですね。
最後に紙面でまとめて合意をとる
決まったことを紙面にまとめて、合意を取るようにしましょう。会話だけでは認識のずれが生じる可能性がありますので、決まった事項を紙面にまとめるようにしてください。
そのときの注意点は、以下の4点を押さえて紙面にまとめることです。
- いつまでに/いつまで(期限/期間)
- だれが(主体)
- だれに(客体)
- 何をするのか(行為)
- 今後一切、不倫相手は夫(妻)に会わない
- 1ヶ月以内に不倫相手はご自身と定めた内容をまとめた示談書に署名する
などが具体例としてあげられます。
STEP4:示談書作成を弁護士に依頼し、内容証明郵便で相手に送付する
決まった内容を示談書にまとめます。その際には弁護士に依頼して示談書を作成することをおすすめします。弁護士に依頼して示談書を作成することで“法的問題がない示談書”を作ることができるからです。
慰謝料を請求する際に示談書を作成するのは『慰謝料の支払い関して、法的義務を負わせるため』です。法的に問題のある示談書を作ってしまったら、法的義務を負わせることができなくなる可能性があります。
もしかしたら、相手が示談書に署名しても、後日、弁護士を付けて示談書の法的正当性に異議をとなえてくる可能性もあります。ですので、初めから弁護士に依頼して示談書を作成しましょう。
そして、弁護士に示談書を作成してもらったら、内容証明郵便で相手に示談書を送付しましょう。内容証明郵便を利用することによって、慰謝料請求の時効を無効にしたり、「自宅に示談書が届かなかった」という言い逃れを防いだりすることができます。
詳しくは以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
▶不倫相手に内容証明を送る|不倫解消・慰謝料請求するための全知識
※示談書を公正証書にする|強制執行可能に
示談書は公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書にすることで、相手の慰謝料支払いが滞ったときに強制執行を行うことができるからです。公正証書にしておかないと、後々に裁判を起こさないといけなくなる可能性があります。
逆に言えば、公正証書にしておけば、裁判の手間を省くことができるということですね。少し手間ですが、公正証書にしておきましょう。
書面で慰謝料請求する場合
慰謝料請求をするための有効な方法の2つ目が『書面(メール,LINE,手紙など)での話し合い』です。時間をかけて主張を考えられたり、主張一つひとつが記録に残ったりとよいところが多いです。ただ、相手に言い訳を考える時間を与えてしまうなどのデメリットもあります。
書面で慰謝料を請求するためには以下の2ステップを踏む必要があります。
- STEP1:請求内容を書面で送る
- STEP2:示談書作成を弁護士に依頼し、内容証明郵便で相手に送付する
STEP1:請求内容を書面で送る
書面で請求する場合には日程調整などは必要ないので、いきなり本題になります。請求内容をまとめてやりとりを始めます。請求内容として外せないのは、話し合いの場合と同様に以下の2点です。原因行為に対する指摘もあるとよいでしょう。
- 請求金額
- その金額になった根拠(判例など)
『話し合いで慰謝料請求する場合』でもお伝えしたように、請求金額に見合うだけの理由を提示して納得を得るように工夫しましょう。
STEP2:示談書作成を弁護士に依頼し、内容証明郵便で相手に送付する
示談書を弁護士に示談書を作成してもらい、内容証明郵便で相手に送付しましょう。
弁護士に示談書作成を依頼することによって、法的な問題点をなくすことができ、内容証明郵便で送付することによって、「示談書が届かなかった」などの言い逃れを防ぐことができるからです。
なお、示談書の内容は、接触禁止ですとか、機密条項を設定するですとか、合意ができる範囲においては自由に形成することが可能です。
ただし、合意に至っていることを示す文書ですから、明確に合意されていることを証することができる文書にすべきでしょう。強制執行まで視野に入れる場合には、この場合も示談書は公正証書にしてくことをおすすめします。
▶不倫相手に内容証明を送る|不倫解消・慰謝料請求するための全知識
裁判で慰謝料請求する場合
話し合いや書面でお互いの合意が取れなかった場合、裁判になるでしょう。裁判を通して約束を交わせば、相手に支払いの意思がなくても強制的に慰謝料の支払いをさせられます。
STEP1:訴状を提出する
まず、訴状を提出します。訴状を入手するためには、ご自身が利用する裁判所に行って直接受け取るか、裁判所のWebページからダウンロードをします。
利用できる裁判所は3パターンあります。
- ご自身の住所地を管轄する裁判所
- 夫(妻)・不倫相手の住所地を管轄する裁判所
- 不倫が行われた場所を管轄する裁判所
また、不倫に関する慰謝料請求をする場合には、簡易裁判所か地方裁判所を利用します。どちらを利用するかは、請求する慰謝料金額によって異なります。なお、基本的には、不貞慰謝料請求は不法行為責任を追及する局面が多いので、不法行為、すなわち不貞行為があった場所の裁判所においてでも、提起することは可能になるのです。
-
140万円未満→簡易裁判所
-
140万円以上→地方裁判所
STEP2:裁判所に出廷する
ご自身が提出した訴状、相手が提出した答弁書などをもとにして裁判が開かれます。もし、裁判が1回で終わらない場合には2回目の裁判が開かれ、それでも終わらなければ、次の裁判に引き継がれます。
なお、ごくたまに被告が欠席することがありますが、この場合は、原告の裁判を受ける権利を保護する観点から、なんと原告の主張している事実をすべて認めてもらえておわります。全面勝訴となります。
STEP3:和解する or 裁判官の判決に委ねる
裁判が終了するのは『和解調書に合意したとき』か『裁判官が判決を下したとき』です。
裁判上で和解する場合は、和解調書というものに合意します。和解調書にも裁判官の判決も強制執行能力がありますので、裁判外での和解とはまったく異なります。
ここまでは、不倫した夫(妻)や不倫相手に慰謝料を請求するための3つの方法をお伝えしました。裁判で判決をもらって、しっかりと慰謝料をもらえるのは理想ですよね。
とはいっても、裁判は非常に複雑で体力を使います。訴状を提出したり、弁護士とやり取りをしたりと大変です。
なので、話し合いで済ませたい、という思う人は少なくないでしょう。次の章では『相手と話し合いでの交渉になった際に役に立つテクニック』についてお伝えします。
相手と”話し合いでの交渉”で使えるテクニック
テクニック1:第三者的な冷静さを持つ
第三者的な冷静さを持つようにしましょう。なぜなら、冷静さを失って感情的になってしまうと、脅迫と取られるような発言をしてしまったり、主張すべきことを主張しそびれてしまったりして、予期せぬ形で不利な立場になる可能性があるからです。
不倫した夫(妻)や不倫相手がいて、胸をえぐられるような思いをするでしょうが、ご自身が有利な立場に立ち続けるためにも、常に冷静さを持ち、有利に交渉を進められるようにしましょう。
テクニック2:証拠は開示せずに自白がしやすい文書に誘導する
証拠を持っていたとしても、証拠は開示せず、自白するように誘導しましょう。理由は2つあります。
- 言い逃れや証拠の破壊を防ぐため
- 証拠では押さえきれなかった部分まで自白するため
1つ目の理由は『言い逃れや証拠の破壊を防ぐため』です。証拠を見せてしまうと、それらしい言い訳を作って、言い逃れをしてくる可能性があります。もしかしたら、証拠がパソコンの中にあるデータならば、パソコンを破壊しようとしてくるかもしれません。
こういったことによって証拠の効力をなくされる可能性がありますので、証拠は開示しないようにしましょう。
2つ目の理由は『証拠では押さえきれなかった部分まで自白させるため』です。証拠を出さないと相手は「何が証拠なんだろう。どこまで知られているんだ。」と不安になることでしょう。人は不安や焦燥の状態だと、冷静な判断をしにくくなります。
結果、証拠を押さえられていない部分までしゃべってしまい、それが証拠になるという事態が起きる可能性があります。自白を取得するには、そもそも、証拠に支えられていれば、先方の態度の決定にあたっても事実関係を認めるしかないことになるでしょう。
テクニック3:相手の弱みを知る
相手の弱みを把握するようにしましょう。決して弱みに付け込むということではないので注意してください。
弱みを把握することは両者が得することにつながります。なぜなら、ご自身は慰謝料増額が容易になり、夫(妻)や不倫相手は最悪の状況になるリスクを下げることができるからです。
もう少し具体的に説明します。夫(妻)や不倫相手が避けたいと考えていることを想像してみましょう。たしかに高額なお金を支払いたくないのは間違いありません。しかし、それと同等以上に、不倫の事実が広まって社会的信用を落とすことを避けたいのが一般的です。
なぜなら、社会的信用を落として、仕事に支障が出た場合、多額の損害が出る可能性があるからです。人格を疑われて新しい仕事を任されないくらいならばよいですが、営業先からの信頼を失って、仕事をもらえなくなってしまう可能性もなくはないでしょう。
「この不倫のことに関して口外しません。なので、慰謝料を増額してください」など、相手が避けたいと思っていることを条件に入れると、相手側は安心を得られますし、ご自身も慰謝料の増額の可能性を上げられます。
両者の満足度が上がる方法として『相手の弱みを知る』はおすすめです。
テクニック4:請求金額になった理由を説明する
ご自身が慰謝料を請求しても、慰謝料金額に夫(妻)や不倫相手が納得しない場合があるでしょう。その場合は、伝えた金額になった理由を説明して相手を説得するようにしましょう。
- 私たちと似たような判例があったから150万円にしました。裁判になっても同じくらいの金額になると思う。
- 似たケースがあったからその時点で150万円。けど私たちの場合は、そのケースよりも不倫の期間が2年も長かったからプラスで20万円。だから170万円にしました。
相手が納得しないのは、いきなり意味が分からない莫大な金額を提示されたからです。きちんとその金額に設定した理由を説明してあげることによって、納得を得られるでしょう。
もし、拒否されて裁判になったとしても、判例から根拠を得ている請求金額ならうまく主張が通る可能性が比較的高いでしょう。
【関連記事】
慰謝料が増額する理由を見て、請求金額を決定したい方は以下の記事をご覧ください。慰謝料の増額要因についてまとめています。
▶ 不倫慰謝料の相場は50万~300万|慰謝料が増減する要素の解説
まとめ
この記事では、①話し合い②書面③裁判、以上3つを慰謝料を請求する方法としてお伝えしました。慰謝料を請求するにおいて重要なのは以下の2点です。
- 慰謝料請求金額の根拠を示すこと
- 不倫の証拠をしっかりと押さえておくこと
この2つを用意するためには知っておきたいことは『慰謝料金額の相場・判例』と『証拠の押さえ方』です。以下の記事でその2つをお伝えしていますので、ぜひご覧ください。
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