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不倫や浮気といった不貞行為は、民法上『不法行為』に該当しますので、民法709条・710条を根拠に、慰謝料請求が可能です。
ただし注意が必要なのは、慰謝料請求には時効があるという点です。
この記事では、不貞行為を原因に慰謝料請求を検討している人に向けて、時効の起算点や時効を延ばす方法などについて解説します。
【関連記事】不貞行為はどこから?具体例・有効な証拠・慰謝料の相場を徹底解説
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不貞行為を原因とした慰謝料請求の時効
不貞行為による慰謝料請求の時効は、不貞行為が始まってから20年、もしくは、不貞行為の事実と、不貞行為の相手を知ってから3年を比べた場合の”短いほう“と、民法724条によって決まっています。
【20年のほうが短いケース】
【3年のほうが短いケース】
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。(民法724条)
ただし、注意が必要なのは、不貞行為の慰謝料は、配偶者にも、不貞行為の相手にも請求できるというポイントです。
実は、配偶者に請求する場合、上記の時効が過ぎていても、離婚が成立してから6ヶ月以内であれば問題ありません。
これは、民法159条を根拠にしています。
(夫婦間の権利の時効の停止)
第百五十九条
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。(民法159条)
つまり、結婚している限り、配偶者に対して慰謝料の時効は成立しません。何十年前の不貞行為であったとしても、離婚協議や調停、裁判の最中であるならば、しっかりと請求が可能なのです。
なお、不貞行為の相手に対する慰謝料請求の時効は、原則通り不貞行為を知ってから長くても3年間ですので、配偶者には請求できるけれど、不貞行為の相手には請求できないといった事態になることもあります。
時効の起算点
3年のほうの時効について、いつからカウントを開始するのか? という起算点について少し確認しておきましょう。
3年の起算点は、『損害と加害者を知ったとき』でしたね。
損害を知ったときとは、不貞行為があったこと、その事実を現実的に認識したときのことをいいます。
一方、加害者を知ったときというのは、損害賠償が可能な程度に相手を知る、具体的には加害者の名前と住所を知ったときという最高裁の裁判例があります。
参考:事件番号 昭45(オ)628号
文献番号 1973WLJPCA11160001
つまり、
- 不貞行為があることはわかったけれど、不倫相手が誰かはわからない
- 相手の顔はわかったけれど、名前までは知らない
- LINEのIDしか分からない
といった程度の場合には、時効が開始されない可能性があります。
ただ、時効の起算点は非常に微妙な判断となることもありますので、不貞行為の相手に慰謝料請求を検討している人は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
請求したい慰謝料の内容によって起算点は異なる
請求したい慰謝料の内容によって、つまり、どのような損害に対して慰謝料を請求するかによっても、起算点は変わってきます。
具体的には、次の3つが考えられるのではないでしょうか。
- 不貞行為により発生した精神的苦痛に対する慰謝料
- 不貞行為を原因として夫婦関係が破綻したことに対する慰謝料
- 不貞行為を原因に離婚することに対する慰謝料
①の場合はこれまでの説明通り、3年の起算点に関しては不貞行為があったときと、その不貞行為の相手を知ったときです。
不貞行為は、夫婦間の『婚姻共同生活の平和の維持という法的に保護される権利』を侵害し、損害を発生させますので、不貞行為の事実を知ったときが起算点になるのです。
一方、②と③は異なります。
不貞行為により夫婦関係が破綻した場合や離婚した場合には、そのタイミング(夫婦関係が破綻した、離婚が成立した)が起算点です。
法律によって時効が定められているのは、不貞行為やその相手を知れば慰謝料の請求が可能になるからであり、権利があるにもかかわらず行使しないのは、請求する側に原因があると考えられているからです。
「権利の上に眠るものは保護に値しない」という格言の通りというわけですね。
ただし、夫婦関係が破綻したことや離婚したことに関する損害は、実際に破綻・離婚するまで判断ができません。
つまり、不貞行為の事実や相手を知ってから3年経っていたとしても、夫婦関係の破綻や離婚から3年経っていないのであれば、不倫相手に慰謝料請求できる可能性があるのです。
【関連記事】夫婦関係破綻の定義とは|冷め切った夫婦関係を証明するためのポイント
時効を伸ばす方法
時効を気にせず余裕をもって請求したいものですが、ケースによっては時効ギリギリといった場合もあるでしょう。
ここでは、時効を延ばす方法を紹介します。
催告
催告とは、慰謝料を訴訟外で請求することをいいます。
注意点としては、催告をしても時効は中断せず、時効完成が6ヶ月停止するだけであるということです。また、2度目の催告でさらに6ヶ月時効が停止するということもありません。
そのため、催告は時効完成間際の場合に行い、6ヶ月以内に次で説明する通り裁判を提起する必要があります。詳細は弁護士に相談することをおすすめします。
裁判
裁判で慰謝料を請求すれば、その時点で時効は中断します。
時効の中断とは、カウントがなかったことになるという意味で、カウントがストップするということではありません。
つまり、裁判をすればその時点からまた新たに3年の時効がスタートします。ただし、20年の時効に関しては延長されることはありませんので注意が必要です。
裁判で慰謝料を請求するには、豊富な法律知識が必要になりますので、弁護士に依頼するようにしてください。
債務承認
債務承認とは、簡単にいうと、配偶者や不貞行為の相手が「不倫した事実を認めている」もしくは「慰謝料の支払いを認めている」ことです。
債務承認の方法はどのようなものであっても構いませんが、口頭の場合、後から何とでも言い逃れできますので、LINEやメール・書面などが望ましいでしょう。
なお、債務承認があった場合、その時点で時効のカウントがなかったことになります。
つまり、3年の時効が成立していたとしても、それまでのメールなどのやり取りのなかで債務承認が確認できれば、その時点から3年のカウントが再スタートしているということです。
時効が成立した後に慰謝料請求する方法
時効が過ぎてしまったら慰謝料を一切請求できないかといえば、そうとも言い切れません。
時効が成立した後でも、配偶者や不貞行為の相手に慰謝料を支払う意思があり、実際にあなたが慰謝料を受け取ったとしても問題はありません。
さらに言うと、配偶者や不貞行為の相手が後から時効に気づいたとしても、貰った慰謝料を返金しなくてよいといったケースもあります。
時効が過ぎているからといって、決してあきらめず、必ず弁護士に相談することをおすすめします。
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まとめ
この記事の内容を簡単にまとめます。
- 不貞行為を原因にした慰謝料請求の時効は、不貞行為があってから20年、もしくは不貞行為の事実と相手を知ってから3年の短いほう
- 配偶者への慰謝料請求は、離婚してから6ヶ月以内まで可能
- 夫婦関係の破綻や離婚への慰謝料請求の時効起算点は、破綻した、離婚したタイミング
- 催告・裁判・債務承認によって時効の延長が可能
なお、時効が迫っている場合には、なるべく弁護士に相談し、スムーズに慰謝料請求することをおすすめします。
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