「今、離婚の話し合いをしているところだけど、相手が勝手に離婚届を提出してしまわないか心配……」。そんな悩みを多く耳にします。
果たして、勝手に離婚届を出された場合、離婚は成立してしまうのでしょうか。また、勝手に離婚届が提出されるのを阻止する方法はあるのでしょうか。
結論から言いますと、勝手に離婚届を出させない方法は、ちゃんとあります! これを読んで、ほっとされたでしょうか。
具体的に言えば、離婚届不受理申出という手続きを行なえば、いつの間にか離婚したことになっていた、という状況を回避することができます。
今回はこの離婚届不受理申出について、徹底的に調べてみました。
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この記事に記載の情報は2021年11月19日時点のものです
離婚届不受理申出とは離婚届の受理を防ぐためのもの

では、離婚届不受理申出とは、いったいなんでしょうか。
調べてみると、
配偶者の一方が協議離婚に同意していないのに、他方が勝手に離婚届を提出する危険のある場合や、一度は離婚に同意して離婚届に署名・押印したが、その後に気が変わったような場合、市区町村役場に備え付けの不受理申出書に記入して提出することで、後から提出される離婚届は受理されない。申し出は6カ月間は効力があり、更新できる。
(吉岡寛 弁護士 / 2007年)
(引用元: (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」)
とありました。つまり、こちらに離婚の意思がない場合、相手側が勝手に離婚届を提出しようとしたとしても、それより前に離婚届不受理申出をしておけば、離婚届は受理されない、というわけですね。
なお、どちらか一方が勝手に相手の名義で離婚届を作成して提出することは、犯罪となる可能性があります。
しかし、その危険を冒してまでも、勝手に役所に提出してしまう人がいるというのも、また事実なのです。そのため、離婚届不受理申出なる制度が用意されているんですね。
離婚届不受理申出の手続き方法
では、「ぜひ、離婚届不受理申出をしておきたい」という人のために、その手続き方法をご紹介しましょう。
1:離婚届不受理申出書を入手する
離婚届不受理申出を行うためには、まず、“離婚届不受理申出書”を手に入れなければなりません。
離婚届不受理申出書は、全国の市役所や町役場などで手に入れることができます。自分が住んでいる場所でなくても、かまいません。
見ず知らずの土地の市役所に行ったとしても、そこで離婚届不受理申出書を手に入れることができるのです。
一部の市役所では、離婚届不受理申出書の書式をダウンロードすることができます。忙しい人は、こういったサービスを利用し、あらかじめ記入しておいてもよいですね。
2:離婚届不受理申出書に記入する
離婚届不受理届出書の具体的な書き方は以下のとおりです。
日付
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離婚届不受理申出書を提出する日の日付を書きます。
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宛先
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申出をする人(つまりあなたです)の“本籍地”の市区町村長宛になります。もし、あなたが外国の人で日本に本籍地がない場合は、相手方(パートナー)の本籍地の市区町村長宛ということになります。
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申出人・相手方の氏名・生年月日など
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申出人、相手方、どちらも氏名、生年月日、住民票上の住所、本籍地、本籍地の筆頭者氏名を記入する欄があるので、記入します。相手方の欄は、分からないところは空欄にしていてもかまいません。
もし、あなた、もしくはパートナーが外国人の場合は、氏名をカタカナで記入し、本籍地には出身国名を記入しましょう。
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申出人の署名・押印
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あなたの署名を記入し、押印をします。
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申出人の連絡先
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これは、あなた自身に確実につながる連絡先を記入してください。持っているならば、携帯電話が一番よいでしょう。
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3:市役所へ届ける
さて、離婚届不受理申出書の記入が万全に終わったならば、次はいよいよ、提出です。離婚届不受理申出書は、全国どこの市区町村役場でも提出することができます。提出の際には、
- 申出人の印鑑(認め印でも可能)
- 本人確認書類(免許証・パスポートなど、本人であることが確認できるもの)
以上の2つも、離婚届不受理申出書と一緒に持っていくようにしましょう。
ただし、注意しなければいけないことがあります。
もし、あなたの本籍地ではない場所で離婚届不受理申出書を提出した場合、そこから本籍地へと転送されることになります。
つまり、直接本籍地に提出するよりも、若干のタイムラグが生じることになるのです。
その間に、相手方が本籍地にて離婚届を提出してしまったら……おわかりでしょうか。
せっかくこちらが離婚届不受理申出書を提出しても、本籍地に転送される前に、離婚届が提出されてしまう危険があるのです。
ですから、離婚届不受理申出書を出したい場合は、できるだけ早く、本籍地にて提出するようにしたほうが確実でしょう。
なお、離婚届不受理申出書に有効期限はありません。つまり、提出してしまえば、ずっと有効であり続けるのです。
以前は有効期限があったようですが、平成20年5月以降の申出については、有効期限が撤廃されました。もし離婚届不受理申出の効力を失くしたい場合は、取り下げ手続きをする必要があります。
郵送での提出も可能
実は、離婚届不受理申出書は、郵送で提出することもできます。
しかし、気軽に提出できるわけではなく、さらに公正証書などが必要となることがあり少々手続きが複雑なので、直接市区町村役場に出向いて手続きをするのが一番スムーズでしょう。
離婚届不受理申出は、とにかく時間との勝負です。相手方に行動を起こされる前に、すばやく提出してしまいましょう。
離婚届不受理申出を提出する前に離婚届が受理されてしまった場合

もし、タッチの差で離婚届が受理されてしまった場合は、どうすればよいのでしょうか。詳しくご紹介します。
離婚無効調停を行なう
離婚には双方の同意が必要となります。そのため、相手が一方的に同意のない離婚届を提出しても、離婚は法律上成立しません。
しかし、離婚届が提出されてしまうと、戸籍上は離婚したことになってしまいます。このような戸籍の記載を抹消する場合、家庭裁判所に“離婚無効確認調停”を申し立てる必要があります。
調停に必要なもの、そして大まかな流れは、以下のようになります。
「協議離婚無効確認調停」は、相手方配偶者の住所地の家庭裁判所又は夫婦が合意で定める家庭裁判所に提起することができます。費用や必要書類については家庭裁判所に問い合わせれば教えてくれますが、おおよそ次のものが必要となります(申立前に入手が困難なものは裁判所に相談してみましょう)。
・申立書(書式は裁判所に備えつけのものがあります)
・夫婦双方の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
・離婚届の記載事項証明書
・収入印紙1200円分(申立費用)
「協議離婚無効確認調停」を申し立てると、相手方に裁判所から呼び出しがかかり、調停期日が設けられ、調停委員を交えて話し合いの機会がもたれます。
調停期日で双方の事情を聴取した結果、相手が勝手に離婚届を作って提出したことを認め、離婚を無効とする合意に至った場合には、その合意に基づいて、裁判所が離婚の無効を確認する決定(審判)を下します。
(引用元:未来創造弁護士法人)
離婚無効訴訟を行なう
もし、相手方が調停への出席を拒否したり、離婚届を勝手に提出したことを認めなかったりした場合、調停は不調となりますので、訴訟手続で争う必要があります。
つまり、“協議離婚は無効である”ことを確認するための裁判を行なうことになるのです。
訴訟においては、夫婦間の離婚に関する話し合いの有無・状況や、相手方が離婚届けを偽造する動機や離婚届の作成経緯等についてお互いに主張を戦わせ、その主張を裏付ける証拠を双方当事者が提出し、裁判所が必要な調査を行って、離婚届が偽造されたものであるか否かが審理されます。
その結果、裁判所が離婚届が偽造であると判断した場合には、離婚が無効である旨の判決が下されることになります。
(引用:未来創造弁護士法人)
離婚届不受理申出を提出したが離婚に合意した場合
もし、離婚届不受理申出書を提出したけれど、「やっぱりもう、あの人とはやっていけない」と強く感じ、離婚を決意するようになった場合は、どうすればよいのでしょうか。
方法は簡単で、離婚届不受理申出を取り下げた上で、夫婦が正式に署名した離婚届を市区町村役場に提出すればOKです。これにより正式に離婚が成立します。

まとめ
以上、離婚届不受理届出についてお話してきましたが、いかがだったでしょうか。
愛し合って結婚した2人なのに争うというのは悲しいことですが、あなたが心から納得できるまで、離婚に合意するべきではありません。
パートナーに勝手なことをさせないためにも、離婚届不受理申出についての知識を、しっかりと覚えておいてくださいね。